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◆DNF公式

第一章:特別編



続きより【第二章 七つの色】
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 魔界。
 本当に面白い所だ。

 魔界には光が存在しなかった。当たり前の事だ。ただ異空間を漂うだけの小さな惑星の部分だったのだから。しかし、時折魔界が太陽の存在する惑星と接触する時があり、その時ならば外の世界との扉が開かれ、光が少しずつ魔界に屈折して流れ込んで来た。屈折した光は七つの色に分かれて空を飾る。この時だけは魔界がこの宇宙のどの惑星よりも美しく輝く場所となった。闇だけが存在していたこの世界も時々はこのような恩恵を受けた。

 光が魔界を照らす時、俺は魔界のあちこちをゆっくりと飛んで通った。見るものがあるのは俺にとっても楽しい事だからだ。

 しかし、美しい光が照らしたからといって現実までもが美しくなる訳ではない。あちこち酷く崩れていく建物の合間に、名も知らぬ死体が腐乱していた。周囲の壁の血痕はその死体達がこの世に最後に残した指紋のようなものだ。だが彼等の期待とは異なり、どれほど壮烈に血を吹いて死んだかで人生の価値が決められる訳ではない。残念な事に血の色は七種類ではない。ただ赤い色であるだけだ。

 歪な生命体達が群れをなして何処か楽しげに戦っているのが見えた。彼等はあのように生きる事――寧ろ死ぬ事――特別でない事を何故解らない。名も解らぬ死体になる為にもがくなどとは。

 しかし、俺は知っていた。彼等が目的するものは明白だった。彼等は自分が"使徒"である事を望んだ。全宇宙から魔界に集まった様々な生命達が、只管一心に頭を下げる者。"使徒"。恐怖の象徴。称賛の対象。そして、何時からか人々が俺を称して呼ぶ名。"使徒バカル"。

 人々に映る俺の色もまた、七色ではなく、ただ赤い色だけだった。

 使徒と呼ばれる者は俺以外にも何人か存在した。俺はそれらの一つ一つを繊細に見詰めていた。彼等の実力はまだよく解らないが、驚くべき事にそれらの全てからヒルダから感じられた機運――俺も同様の機運を持つ。恐らく彼等も俺からそれを感じた筈だ。

 使徒とはいえ、俺は彼等の殆どが余り大した事はないと思った。しかし、その中でただ一人無視出来ない人物がいた。彼を思い出す度に、全身に恐ろしい戦慄が走った。彼が持っている強さの深さを己の力では到底測る事が出来なかったのだ。生まれて初めて死を恐れた。彼の名前は〝カイン〟であった。

 これから使徒と呼ばれる者達と戦わねばならないのだろうか?

 実際は〝使徒と称される者達〟と言いつつも、俺の頭の中にはカインと自分が戦う光景だけを繰り返して描いていた。その戦いは、常に彼の手によって自分の身体が襤褸切れのように引き裂かれ終わった。

 魔界。此処にはきっと何かがある。ヒルダが異空間を巡り回って、〝使徒〟達を此処魔界と呼んでいる。彼等は皆俺と似たような理由で此処にやって来たのだ。運命の導き。そう、それが一体何なのであろうか。ヒルダは一体何をしようとしているのだろうか。

 しかし俺は焦らなかった。俺が運命を避けない以上、きっと運命も俺を避けてはいかないだろう。今はただ待つ時であった。

 魔界に七色の光が降り注ぐ日は、間違いなく新たな強者が外の世界から魔界に乗り込む事を意味している。今日現れたのはまた新たな使徒だろうか。それともまた路地裏で静かに腐って行くだろう名も知らぬ青二才なのか。


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2011.01.22 Sat l アラド戦記 世界観 l COM(0) TB(0) l top ▲

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