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第一章:特別編
第二章:七つの色



続きより【第三章 預言者】
 何時もと同様に、俺はただのんびりと魔界の空を飛んでいた。
 暗い闇の中でも新たに建てられた建物の姿が微かに見えた。これらは全て建築家の爺さんの作品である。〝ルーク〟といったか。言葉を発する事が出来ない老人であった。狂ったように建物を建設していくその姿は、老いて呆けた生命体がどうなるかを身をもって示していた。

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 ルークは建物を建てる事以外にも、時々だが魔界に電力が入ってくるようにした。勿論本当に魔界に電力が入ってくるには、此処には容易ではない条件――《メトロセンターに住む〝アントン〟が眠りに付いた時》、《丁度ルークが全力を出す余裕があるのであれば》――が付いていたが。

 高度を上げて街を見下ろしていたあの時も、偶然に電力が来た時だった。


(疎らに入って来る光が街をもっと歪んで見えるようにするな)

 明かりは少し入って来たがすぐに消えた。もう帰ろうかと思った瞬間、何か発見した。いや、何か発見したような気がした。

(明かりが入った時見えた建物……確かに自然的な形状ではなかったが……偶然なのか)

 先ほど明かりが入って来たのだから、メトロセンターに行くとルークを見つける事が出来るだろう。俺は全速力で飛んだ。

「おいルーク! 電力がまた入ってくるように出来るか!?」

 ルークを見つけるや否や、地に降りながら叫んだ。しかし、ルークは唯黙々と作業を続けていた。

「俺は何かを見た気がしてね。もう一度確認したいんだ」

 ルークは俺の方へと振り返りはしなかった。俺の話が聞こえないようであった。俺は自分の巨大な身体を軽く飛ばしてずしんと重々しい音と共にルークのすぐ前に立ち塞がった。重々しい音は、巨大な壁と鉄の塊に弾かれて、絶え間なく木霊する。メトロセンター全体が揺らいだ。俺は発電機を指して言った。

「邪魔をしてすまんが、電気をまた暫く入ってくるように出来ないだろうか?」

 爺さんが聞いているかどうかは気にしていなかった。俺は言葉よりは圧倒感と丁寧さが伝わるのを望んだ。

 ルークは初めて作業の手を止めて、じっと俺を見上げた。
 実際の所〝見た〟というのは推測だったが。中を覗き見る事が出来ない眼鏡の為に彼の目が本当はどこに向けられているのか解らないからだ。唯俺の方に顔を向けていたのは確かではあった。彼は暫く俺を見詰めていたが、やがて髭に覆われた口をもぞもぞと動かした。

「爺さんは俺に言いたい事があるのか? そういえば、その建物は全てお前が建てたものだったな」

 ルークは俺の方に向けていた顔を元に戻し暫く考えると、そのままこつこつと歩いて幾つかのスイッチに触れた。すると、大きなモーターが掛かる音が鳴り始めた。

 モーターが掛かった事を確認した俺は勢い良く飛び上がって、さっきの光景が見えた場所に行った。その周辺の空をぐるぐる回りながら、再び電気が入ってくるのを待つ。やがて、遠くからジジジ、ボン、と騒々しい音が連続的に聞こえてきて、メトロセンター周辺から順番に電気が入ってきた。

 やっと確認出来た。さっきは鮮明に見られなかった光景を。

 目の前で一匹の龍が轟々と燃え盛る炎の中で首を長く伸ばして鳴き叫んでいた。建物の形状と入ってくる明かりを利用して、粗く繋がった象徴的なイメージだったが、この絵を描いた者の意図は明白であった。

《バカルよ、良く視ておけ。これが貴方の死の姿である》

 急に背筋が悪寒が走るのを感じた。実際にこれが俺を描いているという証拠はなかった。唯一体の龍だけであったから。しかし、魔界に龍族は自分の他に居らず、俺の知る限り俺以外のルークが知っている龍はこの宇宙に存在しなかった。俺が既に龍達の王であったではないか。

 ところが、それだけではなかった。容易に燃えて死ぬその図の周辺には、他にも三つの図があったが、どれもが皆生命体の死を描いていた。

 一つは、形状が曖昧な者が洞窟の中で形が散らばって消えていた。
 もう一つは、足が複数ある者が崩れる建物に潰されて死んでいった。
 最後の一つは、四足で歩く口がつんと飛び出した者がどこか別の空間に吸い込まれ、肉体が八つ裂きにされていた

 俺は彼等が誰なのか知っていた。

(使徒達の死、だと……? あの爺さんが預言者だとでもいうのか? 否。綺麗ではないように及んだのだろう)

 だが狂ったのは俺のようだった。巨大になったルークの顔が何百と全天を覆い同時に俺に言っているのだったから。

「そうだ、君がそのように見たいと言うから見せたが……果たして君には耐えられるかな……?」

 恐らくこれは、預言ではなく……警告である気がした。ヒルダーが使徒達を魔界に集めている理由が正にこれだ、と……。

 ルークの元に帰って確かめてみようかとも思ったが止めた。〝無口〟という特徴は、その悪い爺さんとしては、何と怒鳴られても安全に回避出来る最適の特徴だと考えられた。そう考えて見れば、実際には彼は喋れない振りをしているだけという可能性もあるだろう。

 結局、自分で全てを調べるしかないのだ。


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2011.01.30 Sun l アラド戦記 世界観 l COM(0) TB(0) l top ▲

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