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◆DNF公式

◆第一章:特別編
◆第二章:七つの色
◆第三章:預言者
◆第四章:救世主



続きより【第五章 龍の戦争】
「命の水を一人で占めて、魔界を支配しようだなんて……それを放って置く訳にはいきませんよ。バカル」

「魔界を支配、か……それが多くの援軍が君に集まってきた理由という訳か? 成程、尤もらしいなヒルダー。暴龍王ならしそうな事でもあるしな」

「如何に貴方と言えど、使徒全てを一度に相手が出来るとお考えでしょうか? 貴方らしくないですわね」

「そうだ……元々は使徒達の全てと対立する気はなかった。しかし、俺が行動を起こすよりも先に、貴様が俺より先に他の使徒達を自らの側に引き込んだのだろう? 俺が命の水を得る事が出来たならばより面白くなったというのに……。ふむ、俺はまだ実際に行動を起こした訳でもないのに、こうも迅速に対応出来るとはね。本当に感心したよヒルダー」

「互いに無駄に力を浪費しないよう、素直に降伏なさい。いずれ魔界が別の惑星に到着したら、そこで解放してあげましょう。望むのであれば元々居た龍の惑星に戻して差し上げましょう。勿論、それまでは大人しくしていて貰いますが」

「貴様は今魔界と繋がっているこの惑星を離れる事はしないのではないか? 現に此処数十年間、動かないではないか。此処は、貴様の計画を実現する為の惑星ではないのか? 俺は騙されんよ」

 余裕を持って反論しているように見せるバカルであったが、状況は明らかに悪かった。ヒルダーを筆頭とした魔法使い達、そして何よりも手強い使徒達に囲まれ、退路はない。空にはヒルダーの魔方陣が展開されていた。

(俺が創造した者達は皆死んだのか……? そうなると使徒達を相手にする事は出来ないだろう……これは厳しいな……)

 バカルはルークの建物に描かれた炎に焼かれ苦しむ龍の図を思い出した。あのように虚しく死ななければならないのかと思ったその瞬間、バカルの脳裏に一つの考えが過ぎった。

「俺を殺す機会が幾らでもあったにも拘らず、しきりに降伏を求めてくるな」

「まだ私に慈悲が残っているのかもしれませんわね」

「〝私達が私達を死に至らしめる事がないように……〟、〝私達が私達を死に至らしめる……〟、〝私達が私達を…………〟」

 バカルは自身の呟きによってヒルダーの口元に微かな笑みが浮かんだのを見逃さなかった。彼は自分を取り囲んでいる全ての者達を素早く見回し叫んだ。

「そんな訳がない……貴様が、その遠大な計画を台無しにしてしまう可能性のある者を、殺せる時に殺す以外に選択肢はない筈だ!」

 それは突然であった。バカルが言葉を最後まで言い終える前に飛び上がり、大きく翼を羽ばたかせて一気にカインへと突進した。バカルの長い口笛のような音が響き渡る。バカルを取り囲む者達の中で、カインの守る方向のみ他の誰も居らず唯カイン一人だけが立っていた。。当然の事だ。彼は絶対強者カインではないか!

 カインは、自分に向かって飛んでくるバカルを見ると、右手を挙げ力を集めた。大地が振動し、周辺の軽い物体はこれに耐える事が出来ず渦を巻くようにあちこちへと飛ばされていった。気の弱い者達は一様に気を失って倒れた。一方、バカルの長い口笛の音は、何時の間にか咆哮へと変わっていた。バカルがカインにぶつかる直前、カインは気を集めていた右腕を振るおうとした……が、その瞬間表情が固まった。そして自分へと全速力で向かってくるバカルを一瞬眺め、素早く身を動かしてバカルを避けた。それは退路を開いてくれた形となり、バカルはその道を見えなくなるほど遠くまで飛んでいってしまった。

 誰もが一瞬の内に起こったこの事に、まだ反応さえ出来なかった。唯バカルが飛んで行った方向を、カインを、そしてヒルダーを、交互に見詰めているだけである。カインは自らの行動が理解出来ないかのように、自分の右手を眺めていた。

「追撃するか? ヒルダーよ?」

 イシス=プレイであった。彼は集まった者達の中で唯一空を飛ぶ事が出来る者だ。

 ヒルダーはバカルが飛び去った方向をじっと眺めていたが、イシス=プレイの質問にようやく口を開いた。

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「いいえ……プレイ様。あれほどの速度では、一歩遅れて出るプレイ様が追いつく事は出来ないでしょう。それに、この魔界にはもう行く所がないだろうから、魔界の外まで逃げるでしょうね。今日が彼の最期の日という訳ではないようですわ。……しかし、彼の無限の欲は最終的に彼自身を破滅へと追いやる事でしょう。今日はこのまま撤収する事としましょう……お疲れ様でした」

 ヒルダーの目はこの日もやはり泣いているように見えたが、この時だけは確かに気分が良かった筈だ。
 長らく彼女が夢見てきた計画の始まりとなるスイッチが、非常に良い形で押されたのだから。


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2011.02.07 Mon l アラド戦記 世界観 l COM(0) TB(0) l top ▲

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