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◆DNF公式

◆第一章:特別編
◆第二章:七つの色
◆第三章:預言者
◆第四章:救世主
◆第五章:龍の戦争
◆第六章:一ヶ月前
◆第七章:天界の支配者



続きより【第八章 七人のマイスター】
 マイスターテネブ(Teneb)は悩んでいた。

 マイスターエルディル(Eldirh)……彼女の正体は何だろうか。どうして彼女は魔法を使う事が出来るのだろうか! 彼女は天界人ではなかったのか? それならば彼女が出した数々のアイディアは、もしかしたらこの世界の知識ではないのかもしれないという事か。いったい……いったい何者だと言うのだ!

 エルディルは何時も最高であった。七人のマイスターの中でも、彼女に付いていける者は居なかった。研究が壁にぶつかった際、革新的なアイディアを出すのは何時も彼女であった。彼女が居なかったら、このゲイボルグプロジェクトなんて夢にも思わなかった筈だ。一方、テネブは何時も彼女の天才的な発想の源は何であるか疑問に思っていた。それに対して尋ねられると、彼女は〝瞑想〟だと答えた。テネブは自分にもその瞑想法を教えてくれと笑いながら返したが、その言葉を完全には信じてはいない。彼女の考えというのは、突然の閃きというよりも発展した未来の技術のように見えたのだ。

 実はこれまでテネブは彼女を疑う自分を咎めてきた。彼女の優れた才能は、自分自身からの強い嫉妬心だけではなく、尊敬の念、更には妙な恋心までも呼び起こしている事を知っていたからだ……その為、恋人のジェンヌに向かって感じる罪悪感が常に胸を締め付けてきたので、エルディルの持つ才能が本物ではないという事を想像する事で幼稚に慰めているという事実も良く解っていた。彼は、出来るだけ早くこの混乱を終わらせなければならないと考えた。

 そして彼は本当に彼女の才能の正体を確認する事にしたのだ。彼女へと密かにマイクロ監視ロボットを複数付けた。勿論こんな途方もない事を発見しようとは夢にも思わなかった。魔法だなんて!

 テネブは夜中にこっそりと研究所から出て、あてもなく歩いていた。取り纏めて出てきた煙草を口に咥える。過去十年間、一度も吸っていなかった煙草だ。

(あぁ……三ヶ月振りに吸う外の空気が煙草の煙だなんて……)

『何でそんなに苦しむ? 煙草は脳の化学物質の分泌を促進させ、創造的な思考へと飛翔させてくれるのに』

『どうして貴方の創造的思考の為に私達が寿命を減らさなければならない?』

 何時もあぁだこうだと口論しているマイスターラティとボルガンの姿が思い浮かび、ふふっと間の抜けた笑い声が零れたその時であった。

「悩むまでもない。彼女はこの世界の人ではないのだから」

 威圧的な声。途方もなく巨大な影。テネブは振り返るよりも先に怯えてしまい言葉が上手く出てこなかった。

「なん、だと……お前は……?」

 巨大な影はゆっくりと彼の前に近づきながら言葉を続けた。

「何故彼女は魔法を使う事が出来るのか……何故彼女は私の知らない知識を持っているのか……何故私は彼女を愛しているのか……」

 テネブは少し落ち着いた。暗殺者なら声を掛ける前に殺していただろう。心が少し安定すると大きな疑問が浮かんだ。どうして私の事を知っているのだろうか? その上、エルディルに関する話は誰にもした事がなかったのに。

「逆さまになった都市の蜃気楼を見た事があるか?」

「……?」

「遥か昔、輝かしく科学文明を発展させたテラという惑星があった。そのテラが爆発した時、都市一つが離れ出て非常に長い時間、異空間を彷徨う事になった。それと共に彼方此方から乗り込んだ様々な生命体の争いの場になってしまった。故に皆そこを魔界と呼ぶのだ。その魔界が数百年前からこのアラド惑星と繋がったままだ。逆さにな」

 天界人なら魔界の伝説ぐらい皆知っている。勿論、逆さになった都市の蜃気楼が正に魔界であるという仮説が確認された訳ではないが……この者は何故突然私の前に現れ、私にこのような空々しい講義をするのだろうか……もしかして?

「貴方が言いたい事は即ち……エルディル……彼女が魔界人であり、彼女が伝えた知識は元々は古代テラ惑星の科学技術だったという事か……?」

「誰もが七人のマイスターの首長と呼ぶ事が出来る訳ではない。正にそういう事だ。彼女の名前を良く考えてみるんだな」

「エルディル……エルディル……エルディル(Eldirh)……まさか……ヒルダー(Hilder)!」

 使徒の伝説は天界でも有名な話だった。魔界で行われた龍の戦争でバカルを敗退させたのは使徒だと云う。勿論、その為にバカルが天界へと降りてくる事になったと使徒達を非難する者が居ない訳ではなかったが、殆どの天界人達は何時の日か、その使徒達が天に降臨してバカルを斃してくれると願っていた。それは、天界人達皆が心の中に一様に抱いている巨大な確信であり、宗教であった。勿論、七人のマイスターを始めとする新興勢力のメカニック達は宗教ではなく科学の力を信じていた。

「使徒が……いや、彼女が使徒ならば何故私達を助ける?」

 使徒の助けは驚きであり、同時に喜びでもあったが……理由も解らないまま受け入れる事は出来なかった。

「それは、貴様達が真の強さを得る前に、すぐにでも俺を斃せるようにだ」

 俺を倒し……〝俺〟だと?
 彼は再び目の前の巨大な物体を見上げた。そういう事か、糞ッ。これはバカルだ!

「私は愚かだな。貴方がバカルだったとは。殺しに来たのならさっさと殺しているだろう……何を考えている? 幾ら私を脅そうとも、他のマイスター達の行方を言う事は絶対にないから時間の無駄だぞ」

 懸命に警告をしてみたが何の意味もないという事実は良く解っていた。バカルが私の事を知っているというのなら、他のマイスター達も……そしてゲイボルグプロジェクトすら、完全に露呈しているという事ではないか! なんて事だ! もうすぐ完成だというのに!

「少しだけ我慢してもらおう。近いうちに死ぬ事になるだろうが、今すぐではない」

「貴方の話は聞かない……」

「ゲイボルグプロジェクトを止めてくれ」

「何? ははははッ」

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 笑いが込み上げてきた。バカルという者はこんなに無茶な事を話す者だったのか? 笑ってみると自分がバカルとのんびりと話をしているという事実が本当に軽く思えてより一層大きく笑った。しかし、笑って全てを納得する事は出来なかった。やはり何かおかしな点があったからだ。私の事を、ゲイボルグその物についても知っているなら、何故そのまま皆殺しにするでもなく敢えて私を訪ねて来たのであろうか?

「そのゲイボルグが完成されれば」

 バカルの威圧的な声に、テネブの笑いは徐々に小さくなっていった。バカルは一方的に自分の話を続けていく。

「……俺は本当に死ぬかもしれないな。しかし、俺はそのように死ぬ訳には行かない。まだ貴様達の種族全体が強くなった訳ではない。ましてや、貴様達の七人のマイスター達でさえ然程強くもない。ゲイボルグは厳密に言えば貴様達が造った物ではないではないか。結局それは古代テラの科学文明の力の一端。これではこの惑星の滅亡を防ぐ事は出来ん……」

「滅亡? 今度は格別に言葉を失うよ」

 しかし、バカルの言葉は全てが出鱈目などではなかった。ゲイボルグを提案したのはエルディルであり、プロジェクトが詰まった時に解決策を出したのもエルディルであった。そう……それはエルディルの成果。エルディルが本当にヒルダーならば……。

「今すぐでなければ……私を何時殺すのだ?」

「貴様達の研究が後世に継がれる準備が出来たら」

「後世にだと? それに何の意味が……」

 テネブは聞き返そうとしたが、それは本当に大きな意味を持つのだという事を悟った。全ての事を知っているバカルがその気になれば、全ての成果を一掃してしまう事くらい造作もない筈だろうに、それを遺すだと?

「それなら、後世の人々が私達マイスターの成果を分析し、独自の技術で吸収出来るようにそっとしておくのか? ゲイボルグでなくても、いずれ貴方を斃すに値する技術が登場すると?」

「それこそが最終的に俺が望む事だ。尤も、貴様の考える〝いずれ〟は非常に長い時間が掛かるだろうがな」

「結局……何をしようというのだバカル」

「そろそろ俺の話を聞く気になったか」

 バカルは淡々と、今までの自分の事を語った。龍の惑星、ヒルダーとの出会い、魔界という所、使徒、ルークの予言、そしてヒルダーが成そうとしている事、自分が成そうとしている事。

 テネブは静かに話を聞いていた。やがてバカルの話が終わると、テネブは静かに話し始めた。

「この全ての話の証拠は、エルディルが魔法を使う事が出来るという以外にはない。しかし、私が信じようが話したそれらは実際には重要ではないのだろう。いずれにしろ、貴方はゲイボルグプロジェクトを崩壊させる……そうではないか?」

「正確には違うな。俺が貴様にこんな話をするのは、先も言ったが貴様達に研究成果を後世に遺す事が出来る機会を与える為だ。もし拒否するならば、貴様達と共にこれまでの成果を全部抹消して、再び貴様達のような者達が現れるのを待てばいい。実際、百年ほど前にも貴様等程ではないが、かなりの成果を出してくれた友人が居た。残念ながらその友人は俺の提案を拒絶しても跡形もなく消えたがね。貴様達の成果は優れているから少し惜しくはあるが……貴様達の種族もその間に成長しているだろうから、今回は数十年程度待っていれば良いだろう。特に大きな損害という訳でもない」

 テネブは自分に選択肢がないという事を理解した。それならば……。

「良いだろう。その代わり二つ頼みがある」

「聞こう」

「私は死んでも構わないから、他のマイスター達を生かしてくれ。彼等が残って再起を図れば良いではないか」

「それは叶わん。貴様達が凄絶で壮絶な最期を迎えてこそ、後世に大きな伝説として遺す事が出来る。ようするに残った人々の熱意を燃やすのだ。非常に悲劇的な演出が必要という訳だ」

「それなら……クリオだけでも生かしてくれ。我々の成果を後世に伝えるのに最も適した人物だ」

「その要求を俺は聞き入れよう。代わりに、彼が生き残って成果を伝えるのであれば貴様達に多くの時間を与える必要はないな。もう一つは?」

「ジェンヌ……彼女は私の子供を身篭っている。この世に生を受ける日ももう遠くない。生かしてくれる事は出来ないか……」

「人間というのは本当に不思議な動物だな。自分が死ぬのに、自分の子供が生き残らせる為の話に何の意味がある? 理解出来んな」

「それならこれはどうだろうか。唯ある日突然貴方がマイスター達を殺しゲイボルグを瓦解させたら、後世の人々は貴方の情報力を恐れ、逆に受け継がせるのが難しくなる筈だ。それよりも、私が裏切り者の役割を成すのだ。元々は成功する事が明白なプロジェクトだったが、私の裏切りによって全てが水泡に帰してしまう……これならば後世の人々は恐れる事なく試みるだろう」

「良い考えだな。貴様の子供は助けよう。他に何か願いはあるか?」

 ない訳がないだろう。私達に苦痛を与える事を止めてそのまま消えてくれバカル!

「頭が混乱しているのだろう。しかしすぐに整理しろ。貴様が準備する時間を三日だけ与える」

 バカルが空高く飛んで最早見えなくなったというのに、テネブは微動だにせず、呆然と空を眺めていた。彼の口の火をつけていない煙草が寂しそうにしていた。

 バカルは正確に日を守った。

 マイスターテネブはこれら全てが自分の背信の為に起きた事である様に整え、証拠を残し忽然と消えて誰もいない所で自殺した。
 マイスターボルガンは未完成なゲイボルグに乗って猛烈に抵抗した末に、ゲイボルグと共に壮烈に散った。
 マイスターラティは長きに渡る喫煙や過労が積もった状態で、バカルの手によってゲイボルグが破壊される光景を見た瞬間、その衝撃に耐える事が出来ず血を吐いて死亡した。
 マイスタークリオはバカルの侵攻から辛うじて逃げた後、ゲイボルグの残骸を集めて異空間へ封印し、これまでの全ての研究結果を纏め後世に遺した。
 マイスタージェンヌはバカル軍の侵攻でプロジェクトが失敗すると、衝撃的に早産してしまい摂生していた最中、全ての原因が自分の恋人テネブの裏切りであると知った後、絶望に陥りオドルィズに子供を残して自殺した。
 マイスターオドルィズはプロジェクトの失敗以来クリオを助け、ある日ジェンヌの子供を連れて忽然と姿を消した。
 マイスターエルディルはバカル軍が侵攻する二日前から行方が知れなかった。


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2011.02.15 Tue l アラド戦記 世界観 l COM(0) TB(1) l top ▲

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